牡羊座21度 サビアンシンボル「リングに上がる拳闘士」
2023年04月11日
牡羊座21度 「リングに上がる拳闘士」
ボロボロに打たれても、打たれても何度も立ち上がる。ずっと立ち上がり続ける主人公の映画を見て、わたしは大人になる頃の、未来の自分にかける夢の大きさをイメージしていた。
ゴングの音が鳴り響く。
どんなに強く若い相手を前にしても、もう後には引けない。
因縁のライバルとの熱い接戦が繰り広げられ、最後には家族を支えるため、自分のプライドを守り勝ち抜くために。
ポップコーンを食べる手が止まり、息を呑んだ。
主人公のように命を賭けてまで守りたいもの、勝ちたいこと、この先わたしに見つかるだろうか。
あの頃の制服姿の夢見がちなわたしには、まだ遠くの未来なんてわからなかった。
働き続ける父の背を思い描いた。
働くことはお金を稼ぐこととは競争社会、手にしたいものを得るためにはリングで立ち上がり続ける。毎日のトレーニング、日々の積み重ねだけが勝利へと導くのだ。
わたしが競争苦手になったのはいつからだろう。
かけっこは足が早くていつも1番だった。
山登りも山頂まで登るのが誰よりも早かった。
絵画も作文も書道もコンクールで賞をもらった。
勝負事で負けるとしっかりと悔しかったはずだった。
わたしはいつの間にか闘うことに興味を失い、誰よりも目立たないようにすることに力を入れたいと願っていた。
リングに上がることを諦め、応援する側の1人に。
何かを最後までやり遂げること、誰の目も気にせず一心不乱に完成させること、それは尊く素晴らしいことのはずだ。
ズタボロになって何度も立ち上がる主人公のように、まだやり直せるか。
拳をかかげて光輝くあの瞬間、彼にしか見えない何かがきっとあるのだろう。